今回は(私の)気分転換に光ファイバーのお話をしたいと思います。といっても光ファイバーの仕組みとかそういったのは、詳しく説明しているサイトが色々ありますので、今回は日本の光ファイバーがどう普及していったのか、といったネタ話を書いていこうと思います。
2005年頃の日本のインターネット事情
当時、電話線を使ったADSLというサービスが全国に普及しており一家に一台PCというのが当たり前になってきた時代です。SoftbankがまだYahoo!!の名前でADSLを販売していました。しかし当時、あまりにもADSLユーザーが増えすぎたためにNTTの洞道(電話線を通す地下40mの人工洞窟)がパンクしかけていたのです。具体的には最大直径で8M近くある洞窟が、電話線で埋まりかけていた、と考えてもらったらどれほどか察することができるかと思います。
その当時から光ファイバーは存在していましたが、まだ動画サービスもあまり普及しておらずADSL(1~15M)程度のスピードで不便がなかったため、高速回線の需要がそこまで高くありませんでした。
そこでNTTは選択を迫られることになります。道は二つ。
①洞道の拡張工事を行う
②光ファイバーへの切り替え推進を行う
どちらを選ぶとしても、数千億単位のお金が軽く必要になります。基地局の機械も回線を通す場所も、悩む時間も猶予がどんどんなくなっていく中、NTTはついに決断をします。光ファイバーの切り替え推進を行う方向へ舵を切りました。
ここで全国の主要都市に光ファイバーの推進チームができます。リクルート、マンパワーなどの大手人材派遣会社とタッグを組み、アウトソーシングの営業チームが結成されました。同時に光ファイバーの販売代理店も急増しました。私が在籍していたのはリクルートのチームでしたが、本当に年齢も経歴もバラバラで、当時20歳の私と私より年上の息子もいるおじさんが一緒に営業していました。
しかし、大金をはたいて販売計画を立て人を集めたものの、販売はそこまで奮いませんでした。その大きな理由が「固定電話」です。
当時はまだ固定電話をもつ家庭も多く、ADSLは固定電話を利用していればセットで安く利用できました。光ファイバーと固定電話を同時に利用すると、月の利用料金が一万を超えてしまうことと、高速回線の需要があまりなかったことが理由で切り替えは消極的でした。
OSMプランとひかり電話の登場
そこでNTTはプロバイダと提携することで、料金の値引きを行いました。インターネットというのは物理的な回線を提供する回線業者と、それをインターネットに接続するISP、いわゆるプロバイダの2社と契約するわけですが料金の支払いは基本的に別です。これをプロバイダから一括請求にすることで、NTTはコストカットを図ります。これがOSM(ワンストップメニュー)というプランです。
そしてひかり電話の登場で、市場は一気に光ファイバー化へと進みます。ひかり電話の登場で、今までの固定電話を光ファイバーに移行できるようになり、「光インターネット+ひかり電話」と「従来の固定電話+ADSL」の値段差がほぼなくなったのです。
同じくらいの値段なら光ファイバーのほうがいいね、という認識になり一気に申込数が急増します。お手軽ADSLと高級光ファイバーから、光ファイバーが当たり前で使えない地域はADSLでガマン、といった風に認識が全く変わりました。
さらに、それまで最大100MであったBフレッツから最大1Gの光プレミアムの提供開始で、一気に市場を巻き返します。これがどれくらいすごかったかというと、その当時のNTTの株価はGoogleやAppleを抜いて世界一でした。iPhone・iPodが大人気の時代に、Appleよりも株価が高かった、といえば想像してもらえるでしょうか。
VODサービスの登場
光ファイバーインターネットの普及に伴って、VOD(ビデオ・オン・デマンド)サービスも普及が始まります。当時はまだYoutubeもそんなに動画の投稿もなく、いまのように編集された動画はほとんどないような状況でした。
VODというのは、アマゾンPrimeビデオやNetflixなどのサービスの事です。今では当たり前なサービスですが、当時はとても革新的でした。レンタルショップに借りに行っていたDVDですが、返却に行けず延滞料を支払うこともしばしばでした。それが借りに行かなくてよい、返しに行かなくてよい、延滞金もないというので映画が好きだった私は家で毎日のように映画を見ていました。
これを機に、PCでインターネットをするための回線から、家庭のインフラへと光ファイバーは進化していきます。
スマートフォンの普及(2010年ごろ)
実はスマートフォンやタブレットの普及も光ファイバーの普及と相関関係があります。というのも、現在の4Gではパケット量でプラン契約が普通になっていますが、それより以前の3Gはパケホーダイ、どれだけ携帯でインターネット通信をしても定額の料金でした。
というのも3Gのころは携帯でのインターネットは専用に近い形で運用されていました。PCからも見れる携帯サイトもありましたが、携帯でふつうのサイトを開くとエラーを起こしたりまともに表示されない、というのもしばしば。逆に携帯向けサイトは容量が軽く、使い放題にしてもそんなにコストが高くなかったのです。現在のようにサイトやブログを作る際もスマホ・PC・タブレット、全てで見れるように作るというのは一般的ではありませんでした。
しかしスマホの普及と高画質な動画コンテンツの拡充も相まって、スマホの通信パケットも飛躍的に増大します。パケット代を固定で提供するコストのほうが高くなってきたのです。これに伴い、各社は電話代を固定(カケホーダイプランを提供)し、パケット量で契約プランを決めるという風に変わっていきました。このあたりから、スマホがPCサイトを見れる携帯から、電話ができる持ち運び小型PCのような位置に変わっていきます。
家族全員がスマホを持っていて、PCも使うユーザーも(一時期に比べたら減りましたが)いる、という家庭は光ファイバーとWi-Fiが当たり前という風に変わっていきます。これに伴い家庭用Wi-Fiの普及とスピードアップも一気に進みました。
現在の光ファイバー普及とこれからの光ファイバー
日本は実は光ファイバー大国です。人口カバー率で言えばほぼ100%で、電柱があるところであれば、なにかしらの光ファイバーが(物件の構造・権利的問題を除けば)利用できます。そして契約のスピード/値段でみると、世界でも最安レベルです。
これは先に書いたNTT東西の功績がとても大きいと思います。スピードはどんどん上昇しつつ、利用コストは下がってきていますので、ポケットWi-Fiが普及したいまもユーザーは多いです。少し話はそれますが、次世代の5Gというスマホの通信規格も実はdocomo主導で開発していて、通信規格に関してはNTTはけっこう世界的なリードカンパニーなのです。
次世代の10G回線については、NTTよりもNUROが先んじてサービスを提供していますが、NTTもすでに一部地域で10G回線の申し込みを受け付けています。コストも今とあまり変わらないくらいで提供予定ですので、あと数年もすれば10G回線が都心部では当たり前になってきそうですね。
2025年ごろからアナログの電話は順次廃止になるという話もありますので、光ファイバーは今後、家庭・仕事の様々なインフラへと発展していくでしょう。
現状の問題点
日本はこんなに低コストで使えるのだから光ファイバーは使わないと損だ、とまで言う人もいますが、もちろん必要ない人が無理に契約する必要はありません。ですがコロナの流行からリモートワークが増えてきていて、インターネット回線の需要は今、一気に増大しています。
政府もリモートワーク用の回線を、会社負担の経費として認める方針になりそうですから、会社の経費で社員の家にインターネット回線を持たせるというのは当たり前になるかもしれません。
そしていま問題になっているのが、どの回線が良いというのを一概に言えない状況になっているという点です。というのも、光ファイバーの古いマンションタイプで、リモートユーザーが多いところは使用が激しすぎてとても遅い、などの報告もあります。このため古いマンションでリモートユーザーが多い場合は、ポケットWi-Fiのほうがスピードが出るケースもあるようです。
光ファイバーの契約プランについては別記事を書きますが、おすすめ順は
①NURO
②au系光ファイバー(光配線方式)
③NTT系光ファイバー(光配線方式)
④Softbank Air
⑤au系VDSL
⑥NTT系VDSL
といった感じです。都内のマンションではNUROのマンションタイプがけっこう入っています。VDSL系で遅い場合、ポケットWi-Fiのほうが速いというケースもけっこうあります。詳しくは別記事で書きますが、もし賃貸マンションでしたら戸建てプランを契約するというのも一つの手です。(コスト差は2000円~3000円ほど)
VDSLを利用している方で、リモートワーク中で回線が遅い、という方はポケットWi-Fiと光ファイバーの比較を記事にしますので、そちらをご覧ください。契約を考えている方は、そちらを読んでから検討するとわかりやすいかと思います。
では今回はこの辺にして、次回は光ファイバーのサービス説明とWi-Fiとの比較を行っていきたいと思います。