ようやく第4世代のAMD、Ryzen シリーズの情報がある程度そろってきたので、今回は簡単に変更点とIntelとの比較を個人的に評価していきたいと思います。
今回は個別のCPUの比較は行わず、全体的にどういった変更がなされたか、載せ替えの注意などに絞って解説しています。各CPUの比較はまた後日やります。
前世代との変更点
前モデルでの弱点克服、という点においてはかなり良いアップデートがなされたと思います。
①キャッシュメモリ割当の変更
まずコアに関してですが、AMDは第3世代までは4コアごとにキャッシュメモリを割り当てる方式でしたが、今回より8コアごとにメモリを割り当てる方式に変更しました。併せて各モデルのコア数もアップグレード、という感じ。
これによるメリットは単純にマルチコアでの処理が高速化されました。マルチコアで処理する場合、ほかのコアが持っている情報を参照しようとすると、IOを介してキャッシュメモリの情報を参照するため、処理が遅くなりがちという弱点がありました。今回から8コアごとにメモリを割り当てる方式になり、キャッシュ参照が改善された、というのは良いニュースです。
AMDは内部的にこのメモリごとのコアセットを増やすことで上位CPUを作る、逆に言えば下位CPUはコアセットを減らすことで低価格化を実現していました。
しかしこの4コアセットでの方式が災いして、ベンチマークは速いのに実動作が遅いというわけのわからない弱点がありましたが、今回のモデルから実動作もかなり速くなりました。
②シングルコア性能がおよそ20%アップ
次にシングルコアの性能もついにIntelを抜きました。Intelの第10世代i9-10900K(ハイクラス)と5800X(ミドルクラス)を比較しても、AMDが1割ほど性能が高く、AMDの前モデルと比較しても同周波数でおよそ2割の性能アップ。
単純なCPU性能では、現状AMDに完全に軍配が上がります。ですがAMDを選択すればいいという単純な結論にもならない点があります。
価格が高い
これはけっこうびっくりしました。
まず前モデルとのリリース価格で比較しても、各7000~8000円ほど価格が上がりました。逆にIntelはマイナーアップデートのような変更の代わりにかなり価格を抑えて第10世代をリリースしているので、ハイエンドはAMDを選択することが多くなりそうですが、ミドルクラスまではIntelの方が安くて便利、という構図になりました。
むしろIntelの下位モデルはAMDよりも周辺問題が少なく、かつ安価になったことから事務機・汎用機としてのIntelの時代はまだまだ続きそうだな、という結果になりました。
ハイエンドとしてのAMDCPUの可能性は?
ただ、逆にハイエンドはもうAMD一択ではないか、と思わせる内容になっています。具体的に言うと、よく比較されるのがゲームでのフレームレートや、GPUを使用した場合のCPU使用率などで、AMD第4世代はIntelを圧倒しています。
ただ、AMDの性能が高すぎるために一般的なソフトで比較してもその差がほぼ出ない、という結果になってしまっています。これからのソフト開発にもよりますが、もしハイエンド機種を構成しようと思ったら今後はAMDになると思います。ですが、実際にその性能が必要か、を考えたときにまだそれを活かすソフト環境はない、と考えると現状ほとんどの方はIntelで選択するのではないでしょうか。
実際、現行モデルのi3・i5はかなり低価格となり、かつ性能も高い、GPUを搭載する必要もないと考えると、ミドルクラスまでのPCはIntelで低価格化が進みそう、という結果です。
ハイエンドに関しては、どのレベルでの処理を求めるかにもよります。3D開発やAIディープラーニング開発などの先進研究ではAMD一択だと思いますが、逆にそのレベルでないならIntelで十分すぎる、という結果になっています。
やはりAMDのリリースは少しメインの市場需要からずれている、という感は否めないです。少し先を見すぎな感じがあります。
GPUとの相性はどうか
色々な方の組み合わせで比較してみても、GPU相性は今のところ問題はなさそうです。PCI4.0での対応が早かったこともあり、30シリーズを搭載するならAMD、という気もしますが、現状それを活かせるソフトを利用しているユーザーは、ごく少数、という感じ。
実際のところ、私はおそらく第10世代i7に3070あたりがミドルクラスとしては良いのでは、と考えています。ただこれは次世代CPUのマザー対応なども考えると難しいところがあり、現状はIntelのPCI4.0への対応を見て決定する方がベストだと思います。
実際、ベンチソフト各種で比較した場合、単純性能を計る場合はAMDが勝ちますし、ゲームベンチなどで比較してもAMDが勝ちます。ですがその差もわずか、という感じ。
動画書き出しなどCUDA利用のケースで比較すると、メモリ速度への依存などもありますが、結局第3世代とほぼ変わらないくらいの時間で、誤差レベルという感じ。ただ、ここはGPUのファームウェアアップデートなどで、新型がより高速になる可能性もあるので、未知数な部分も多いと思います。
総評すると、年末商戦ではIntel機の価格にもよりますが、おそらくIntel機の低価格化が進み、このタイミングで汎用機でIntel買い替えの人が多そうです。
買い替えにおける注意点
AMDでアップデートを考えている方への注意としては、現行のマザーボードも利用可能なものは多いですが、BIOSのアップデートをしないとまともに動かないので、CPU載せ替えを検討されている方は、対応だったとしてもまずBIOSのアップデートを行ってから組み換えを行いましょう。
新品で購入する際も注意が必要で、販売店がアップデートをしているケースは多いですが、アップデートはしていない販売店もあるので、自作するなら注意が必要です。マザーごと買い替える場合は、必ず販売店にBIOSアップデートをしているか確認する方が良いです。
次に注意が必要なのがメモリに関してです。
AMDはコア間の情報をIOを通してやり取りするのですが、この時の速度はメモリの速度に依存します。このためAMDのハイエンド機を利用しようとした場合、メモリはけっこう重要なポイントになってきます。
ただ、速ければそれでいいのか、と言われると実はそうでもないポイントもあります。例えば動画の書き出しなどの際はメモリのクロック(速度)が高すぎると、エラーが頻発し結局、少し低いクロックのメモリの方が速く終わるケースも多いです。
もちろんメモリの速度以外の性能にもよりますが、安定的に動作する、という点でいうと2666あたりが平均的に理想で、それよりも高速なメモリは状況によって最適な選択肢が変わる、というのは知っておいた方が良いと思います。
ここら辺はハイエンドならではの難しさがあります。
株価
実際、株価を確認してもAMDは性能的には概ね予想通り、といった感じから、上げ止まりのような売りがなされ少し価格が落ちています。実際には予想を超える高性能でしたが、価格のアップからこれ以上の上昇要素はない、と判断されたような気がします。
逆にこれを受けてIntelの株価は少し持ち直しました。これは低価格化・PC需要の増大を踏まえミドルクラスでの需要が高まっていることもあり、事務機・汎用機としての売上が期待されますが、低価格化により利益がどう出るかは注視したいポイントです。
総評とまとめ
たぶんまだしばらくはIntelをメインに紹介していくと思います。
こちらの読者はハイエンドを求める人よりも、動画編集・音楽編集・汎用機としての使い方が多いと思うので、ハイエンドの紹介以外でAMDの解説をすることは現状少なそう、という結果になりました。
むしろ25日から始まる文化庁の芸術活動の支援事業に関する解説は、Intelメインで自作・ノートPC・BTOの記事を更新していきたいと思います。
周辺機器については、また近日中に、とくにカメラについてをアップデートしたいなと考えております。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。